外国人労働者を採用するメリットデメリットとは
作成日:2019年11月29日 更新日:2021年3月10日
株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗
2019年4月施行の「改正入管法」により、人材不足が深刻な14業種を対象に、一定の技能と日本語能力のある外国人に日本での就労を認めることになりました。このことにより、日本は外国人労働者を単純労働での人材活用にも扉を開くことになります。
[参照] 外務省 入管法改正による新しい在留資格特定技能の創設
外国人労働者活用の施策に積極的な流れから見ても、今後日本の企業で受け入れ、活用していく流れは大きくなっていくでしょう。これまで特に視野に入れていなかった会社でも、企業の経営者や採用担当者として採用について意識し始めているのではないでしょうか。目下の労働力不足解消や企業の国際化などに目がいきがちですが、外国人労働者を採用することにはメリットデメリットがあります。本格的に検討していく第一歩として考えてみましょう。
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外国人労働者によってもたされるもの
まずは、外国人労働者を採用することによって生まれるものについてまとめてみます。
若い労働力の確保
第一に、体力のある若い労働力を確保しやすい点が挙げられます。日本の採用市場とは異なり、外国人労働者の採用では、20~30代の若手人材が豊富で採用しやすい特徴があります。東南アジア諸国の平均年齢で見ると、ベトナムが30歳、ミャンマーが27歳、インドネシアが27歳、フィリピンが24歳と非常に若くなっています。それだけ若い年齢層の労働力が多いということ。外国人労働者の彼らにとって日本は、働きたい国だという認識も強く、就労意欲が高いです。日本に比べて格段に物価が安いので、日本で働くことは母国に住む家族に対して経済的に支えられることを意味しています。「家族のために」と意欲的に働く人も多いでしょう。日本は少子化の影響で、若年層の人材確保がますます難しくなるため、外国人労働者の雇用はこの点は最も大きなメリットと言えるでしょう。
[参照] 外務省 ASEAN(東南アジア諸国連合)
優秀な人材を幅広く求められる
国籍にとらわれず、外国人労働者を採用することでグローバルな規模で人材採用を考えられるので、より優秀な人材を確保できる可能性が広がります。
国内で言えば、若者の労働力は売り手市場になっています。そのため優秀な若手人材は採用が上手で高待遇を提示しやすい大手企業に先を越され、中小企業では優秀な若手人材の確保がさらに難しくなっているという現状があります。現在、外国人労働者を雇用している事業所全体の56.7%が「従業員数30人未満」であることも鑑みると、特に中小企業にとって、若い労働力の確保だけでなく、優秀な人材の確保もテーマになっていることが読み取れます。
グローバル対応を加速させられる
日本語以外の言語を操れる外国人労働者の人材を採用することによって、会社のグローバル対応をより積極的に行えるようになるのもメリットの一つです。
昨今の日本では、訪れる外国人観光客の「インバウンド需要」が拡大していることから、サービスや物販、旅行などの業界では特にインバウンド対応が求められています。
また、ITテクノロジー分野でも外国人労働者の採用に力を入れています。、ITテクノロジーの発展により、WEBエンジニアの需要もどんどん高まってきており、国内だけでなく国外からもエンジニアを募ることにより、自社のITテクノロジー事業を強化・グローバル化していく動きも見られます。
外国人労働者の中には、自国の言語以外にも言語を習得し、3ヶ国語以上のトリリンガルだという人も増えてきています。こうした多言語対応のできる人材は通訳や翻訳などの面でも重宝されています。
海外進出の足掛かりとなる
会社の事業を海外展開させたいと考えているなら、人材の採用はキーポイントになります。外国人労働者を雇用することでビジネス言語は増えますから、対外的な対応はもちろんのこと、人材の人脈などを活用して販路拡大ができる可能性もあります。
日本では売れなくても海外では売れるようなビジネスを構築できるかもしれません。
海外展開を考えている国の出身者が社内にいれば、言語や文化面への理解も強みになりますし、市場調査から社員の渡航サポートなど、多くの役割を期待できるでしょう。現地のビジネス・商売の特性や考え方なども踏まえたうえで仕事を進められるというのは、大きなメリットです。
社内に新しい風を吹かせられる
島国である日本は単一言語の国家で、文化もみな似た背景を持っています。こうした日本の企業に外国人労働者をジョインさせることで、社内には新しい風を吹かせられるでしょう。
多様なバックグラウンド、価値観を持つ外国人を社内に受け入れることは容易いことではありませんが、コミュニケーションを密にする、細かいことまで確認する、などの新しい工夫・流れもできやすくなりますし、日本人とは異なる環境で育ってきているため、これまでとは違ったアプローチでアイデアを出したり、議論したりすることができるでしょう。日本人同士では気付かなかった問題点が見つけられるかもしれません。マンネリ化していた社内ならば、既存社員のモチベーションが上がるきっかけにもなり得ます。このように、社内の技術や企業文化が発展する可能性があるのも、採用するメリットの一つでしょう。
優秀な外国人の雇用でもたらされる不利な点
では、外国人労働者を採用する際のデメリットはどんなものが挙げられるでしょうか。したいと考えた場合には、どのような点に気をつければ良いのか、という視点から見てみましょう。
文化や慣習の違い
最も大きな障壁は、文化や慣習の違いでしょう。「郷に行けば郷に従え」とは言いますが、なんでも日本流というわけには行きません。思わぬトラブルに発展しないためにも、慣習や文化をある程度理解しておく必要があります。
日本人が「当たり前」だと思っていることも一歩海外に出てみればそうではないこともたくさんあります。
・人の前で叱責されることを嫌う
・ものごとをストレートに言う傾向があり、曖昧な表現を嫌う
・残業の概念がない
・宗教観を重視する
など、その外国人労働者のバックボーンによってさまざまな違いがあります。
例えば、中国人や韓国人は体面を重んじる文化があるため、メンツが傷つくことを何よりも嫌がります。他にも、日本では「残業」の概念がありますが、海外では定時帰宅が当たり前だという国のほうが一般的です。こうした価値観は文化によって醸成されるものですから、お互いに歩み寄ったり理解しあったりする努力が不可欠となります。この努力ができない場合には、外国人労働者の採用は企業にとってマイナスとなり得ますので、よく注意しておきましょう。
言葉の違いからコミュニケーション不足になることも
まだ日本語に慣れない外国人労働者へのコミュニケーション努力はもちろんですが、こと日本では言語の背景にある習慣に気をつけなければ、コミュニケーション不足というデメリットを生む可能性があります。
日本人の文化では、「言わずもがな」「空気を読む」などの非言語の意思疎通が良しとされる風潮もありますが、対外国人の場合にはそれは通用しないことを肝に銘じておきましょう。日本人は良くも悪くも物事をオブラートに包んで話しますが、外国人との会話では返って誤解を生じさせることも多いです。はっきり正確に伝えなければ、コミュニケーションが成り立たないケースも少なくありません。
既存社員・会社側に受け入れ体制が必要
外国人労働者を採用する前提として、企業側に受け入れ体制があるかどうかがキーポイントになります。この受け入れ体制が整っていない場合には、いくら意欲的な人であったとしても、就労の定着率は悪くなります。
外国人労働者に日本のやり方に合わせてもらうことも重要ですが、それと同時に社内の体制を整えておくことも重要な課題です。同僚とのコミュニケーションはうまく取れそうか、課題ができた時にも解決法を見出せるような柔軟性や受け入れ体制が既存社員に整っているのか、などのソフト面も確認しておきましょう。
日本人雇用の機会を奪う
会社だけの視点で見ると、外国人労働者を採用することで幅広い人材を求められるメリットがありますが、国全体で大きく見れば、そもそも日本人の求職者の就労機会を奪ってしまうことにもなります。
まとめ
このように、メリットがとても大きいのですが、同時にいくつかのデメリットも存在します。外国人労働者の採用を考えたときには両方踏まえた上で、会社としてどうあるべきか、どのようにこの先の雇用を整えていくのかを再度検討すべきでしょう。実際、外国人労働者を採用してみよう、と結論付いた際には、専門のエージェントを利用するのが確実でスムーズです。特にこれから始めてみようかなと考えている企業にとってはよき相談役となり得ますので、一度気軽に相談してみることをおすすめします。
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