外国人労働者を採用する際に知っておくべき就労制限と永住権
作成日:2019年11月29日 更新日:2021年3月10日
株式会社しごとウェブ 佐藤 哲津斗
外国人を採用する時に最も複雑で個別対応の必要となるのが「在留資格」の扱いです。個々によって在留資格の有無、期間、種類が異なりますので、きちんと把握し、調整や管理をしていく必要があります。とはいえ、外国人の採用にまだ慣れていない企業の場合には、対応する中で戸惑う場面もあるでしょう。この記事では、外国人を採用するならぜひ頭に入れておきたい、在留資格の就労制限や永住権などについてお伝えします。
[関連ページ] 外国人を雇用する際に必要となる就労ビザ・在留資格の確認と申請に必要な費用
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外国人労働者に必要な在留資格には2種類
まず、そもそも「在留資格」とは、外国人が本国に入国・在留して行うことのできる活動などを類型化したものを言います。この資格があることで、日本に住んで活動することができます。
日本に正式な手続きを経て入国してきた外国人は、「在留カード」というものを持っています。これには「在留資格」が記載されているので、それを見て資格の種類・有無を確認しましょう。
[参照] 出入国在留管理庁 在留資格の取得(入管法第22条の2)
この外国人の在留資格ですが、実は大きく分けて2種類に大別できます。
・就労制限のある
・就労制限のない
外国人自身に就労制限があるかどうかは、その企業の仕事・ポジションに入れるかどうかに大きく関わりますので、仕組みをよく押さえておきましょう。
[参照] 出入国在留管理庁 「在留カード」はどういうカード?
就労制限のある在留資格
1つめは、就労制限のあるものです。外国人の就労目的は「与えられた在留資格の範囲内で就労が認められている」資格で、次の中からいずれかを付与される形になります。
在留資格 | 在留期間 | 該当例 |
---|---|---|
外交 | 外交活動の期間 | 外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等、その家族 |
公用 | 5年、3年、1年、30日、15日 | 外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等、その家族 |
教授 | 5年、3年、1年、3月 | 大学教授等 |
芸術 | 5年、3年、1年、3月 | 作曲家、画家、著述家等 |
宗教 | 5年、3年、1年、3月 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師 |
報道 | 5年、3年、1年、3月 | 外国の報道機関の記者、カメラマン |
経営・管理 | 5年、3年、1年、3月 | 企業の経営者・管理者 |
法律・会計業務 | 5年、3年、1年、3月 | 弁護士、公認会計士 |
医療 | 5年、3年、1年、3月 | 医師、歯科医師、看護師 |
研究 | 5年、3年、1年、3月 | 政府関係機関や私企業等の研究者 |
教育 | 5年、3年、1年、3月 | 高校・中学校等の語学教師等 |
技術・人文知識・国際業務 | 5年、3年、1年、3月 | 機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師など |
企業内転勤 | 5年、3年、1年、3月 | 外国の事業所からの事業者 |
技能 | 5年、3年、1年、3月 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機等の操縦者、貴金属等の加工職人 |
興行 | 1年、6月、3月 | 俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手など |
介護 | 5年、3年、1年、3月 | 介護福祉士の資格を有する介護士など |
技能実習 | 1年 | 技能実習生 |
高度専門職 |
1号:5年 |
高度な学術研究、技術分野、経営・管理分野 |
これら就業目的で来日している外国人の在留カードの「就労制限の有無」欄には「在留資格に基づく就労活動のみ可」と書かれています。例えば、製造業のエンジニアに与えられる「技術・人文知識・国際業務」は、「理学、工学その他の自然科学分野に属する知識を必要とする業務」のみが許可されています。通訳として日本にきた外国人労働者が、企業の経理などとして働くことはできません。もし、資格の種類と異なる業務を行なっている場合は「資格外活動」をしていることになりますので、外国人労働者の不法就労として罰せられる可能性があります。
就労制限を見過ごすと「不法就労」で罰せられる可能性も
先ほどもお伝えしたように、外国人労働者の就労制限を見過ごしたり在留資格を遵守していない場合には、雇用側も不法就労としてペナルティを受けることがあります。では、どんな場合にペナルティを受けやすいのか、概ね3つの場合に大別できます。
- 不法滞在者が働くケース
- 入国管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
- 入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース
つまりどの場合にも、資格の確認が最重要になることを意味しています。
不法就労に関わった場合のペナルティ例
・不法就労させたり,不法就労をあっせんした者「不法就労助長罪」:3年以下の懲役・300万円以下の罰金
・不法就労させたり不法就労をあっせんした外国人事業主:退去強制の対象
・ハローワークへの届出をしなかったり、虚偽の届出をした者:30万円以下の罰金
外国人を雇用しようとする際に、不法就労者であることを知らなかったと しても、在留カードを確認していないなど雇用側に非がある場合には、罰則から逃れることはできませんので、よく注意しましょう。外国人を採用する際には、面接の段階できちんと確認することが何より大切です。
就労制限のない在留資格
「外交」「介護」「技術・人文知識・国際業務」など外国人労働者の就労制限のある在留資格に対して、次の4つには、就労制限がありません。
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの在留資格を有する外国人の在留カードには、「就労制限の有無」欄には「就労制限なし」との記載があります。
よって、日本人と同様にどんな仕事にもつくことができます。基本的に外国人労働者は何らかの技術や知識を持っている分野での活用が認められていますが、上記の4つに関してはいわゆる「単純労働」での就業も可能です。
そもそも外国人が就労できないケースもある
「在留資格」が「就労ビザ」とも言われるように、外国人労働者の就業は密接な関係にあります。基本的には就業と紐づいているのですが、中にはそもそも就労資格のない資格というのもあります。
・外国人留学生などの「留学」
・配偶者(夫や妻)に扶養される立場の「家族滞在」
この2種類の外国人の在留カードには「就労制限の有無」欄に「就労不可」と書かれており、日本で働くことは認められていません。
ただし、入国管理局から「資格外活動の許可」を得ていれば、週28時間以内などの範囲内でアルバイトをすることは可能です。このように、留学や家族滞在など、別のところに在留の目的がある場合には、外国人労働者は日本での就労ができないことになっているのです。
外国人が日本に永住し働き続けるには?
日本に長くいる外国人は「永住権が欲しい」と考える人も多いです。なぜならば、この先も何十年という単位で日本で過ごしたいと考えているにも関わらず、在留期限の更新というものが毎回つきまとうからです。また、期間だけでなく在留資格の制限からも解放されたいと考える外国人労働者も多いものです。
永住権を取得すれば、在留期間や資格の種別関わりなく日本人と同じような働き方が可能になります。ここでは、どのような権利なのか、どうやって取得するのかなどについてまとめてみます。
まず、日本に長くいる外国人にもいくつかの種類があることを知っておきましょう。
永住者 | 永住者は在留活動および期間に制限がなく、原則は日本人と同じような働き方が可能。 |
---|---|
定住者 | 定住者は在留活動の制限はありませんが、在留期間に指定があります。※日系人やその配偶者、「定住者」の実子、日本人や永住者の養子、難民指定された外国人など特別な事情を考慮された人が含まれる。 |
帰化 | 日本国籍を取得すること。国籍上は日本人になるので、就労に関する制限はなくなるとともに、日本人同様選挙権なども得られます。 |
このように、外国人の永住者は国籍は母国のままに、在留資格や期間の制限をなくす趣旨のものを言います。取得するメリット・デメリットには次のようなものが挙げられます。
永住者になるメリット
・在留資格の制限がなくなる
・在留期間の制限がなくなる
・在留期間や在留資格にともなう心理的負担から解放される
・社会的信用に繋がり、ローンなども組みやすくなる
永住者になるデメリット
・母国に帰省する際にビザが必要になることもある
・海外に行く際に一定期間内に日本に戻らないといけない
永住者申請の条件
・おおむね10年以上継続して、日本に在留している
・現在の在留資格の最長の在留期間を取得している(例:介護なら5年)
・素行が善良である
・独立の生計を営むに足りる資産または技能を有する
・その者の永住が日本の利益に合致する
外国人の永住者申請についての条件は厳しく、例えば税金を納めていない場合(国税だけでなく住民税も対象)や、交通違反などの問題があると許可を得ることが難しくなりますので注意が必要です。
また、申請にあたっては、日本国籍者などの身元保証人が求められることがあります。ただしこれは借金の保証人などにみられるようなネガティブな意味合いではなく、外国人自身が長年日本に居住しているのであれば、身元保証人を引き受けてもらえるくらい親密な日本人の知り合いがいることを証明するとともに、外国人が日本国内に生活基盤が確立されていることを確認する意味合いが強いものです。身元保証人の範囲も、在留に関する滞在費、帰国旅費、法令遵守の保証に限られます。そのため、会社の同僚や上司が身元保証人になるケースも多いです。
「高度専門職」ビザを持っている場合は永住権取得条件が緩和
「高度専門職」ビザを持っている外国人は、10年以上日本に住んでいなくても、「高度専門職」としての活動を継続して3年行っていれば永住権を申請することができます。加えて、ポイント計算表で80ポイント以上ある外国人の場合には、たった1年の活動で永住申請ができるケースもあるようです。
永住権申請に必要な書類
外国人労働者を雇用するのに必要な永住権申請には、次の14種類の書類提出が必要です。それぞれの状況によって細かい提出書類が異なりますので、法務省のHPなどをよく確認しながら準備を進めましょう。
1.永住許可申請書
2.写真(3×4センチ)
3.理由書(日本語で記載)
4.家族が「家族滞在」の場合には以下の証明書が必要です
(1)戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
(2)修正証明書 1通
(3)婚姻証明書 1通
(4)認知届の記載事項証明書 1通
5.申請人を含む家族全員(世帯)の住民票(マイナンバー記載のないもの)
6.申請人または申請人を扶養する方の就業を証明する次のいずれかの資料
7.最近(過去5年間)の申請人または申請人を扶養する方の所得および納税状況を証明する資料
8.申請人又は申請人を扶養する方の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料
9.申請人または申請人を扶養する方の資産を証明するいずれかの資料
①預貯金通帳の写し
②不動産の登記事項証明書
③①と②に準ずる証明資料
10.パスポート
11.在留カード
12.身元保証書
13.日本に対する貢献を証明する資料
14.その他
この中で、外国人を雇用する側の準備が必要なのは、以下の3つです。
・申請人または申請人を扶養する方の就業を証明する次のいずれかの資料
・最近(過去5年間)の申請人または申請人を扶養する方の所得および納税状況を証明する資料
・申請人又は申請人を扶養する方の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料
雇用する外国人労働者が永住権を取得する意向を示してきたら、在職証明書や住民税の課税(又は非課税)証明書・納税証明書などの準備を進めましょう。
申請書類の提出先は、住居地を管轄する地方入国管理官署、または外国人在留総合インフォメーションセンターです。
[参照] 法務省 永住許可申請
まとめ
外国人労働者の在留資格や就労制限は、個々によって異なります。在留期間や資格の種別、就労制限を守らなければ、雇用する側もペナルティの対象となり得ますので、雇用するならきちんと知っておく必要があります。
また、今後あなたの会社で長期間働いた労働者の中から、永住権の取得を希望する人も出てくることでしょう。取得は本人だけでなく、優秀な外国人労働者の人材を在留期限なしに就労してもらえるという意味で会社側にもメリットのあることです。
ただし、どちらにせよ外国人の採用にはある程度の個別対応が必要となります。こうした取り決めやルールの理解に不安がある場合には、ぜひ外国人労働者を紹介する専門のエージェントを利用してみましょう。そうすることで、よりスムーズにあなたの会社が求める人材にリーチすることができるでしょう。
【相談無料】お気軽にお問い合わせください。優良な外国人労働者をご紹介します。